文書作成日:2024/12/31
人事労務管理を行う中で、実務に関連する法令改正の動向を押さえておくことはとても重要です。特に近年、人事労務分野においては様々な法令改正が頻繁に行われています。そこで、今回は今後数年のうちに施行が予定される法令改正の動向を確認しておきます。
[1]主な法令改正
現時点で施行が決定されている主な法令改正は下表のとおりです。2025年4月と10月に改正育児・介護休業法が段階的に施行され、規程等の見直しや制度運用ルールの整備が求められます。また、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金が創設されることで男性の育児休業取得率の上昇や申請手続きの増加が予想されます。
表 今後の主な法令改正内容
施行時期 | 概要 | 根拠法・関連法 |
2025年1月1日 | ・労働者死傷病報告、定期健康診断結果報告書等の電子申請の原則義務化 | 労働安全衛生規則 |
2025年3月31日 | ・65歳までの継続雇用の経過措置終了 (定年廃止/65歳までの定年引き上げ/希望者全員65歳まで継続雇用 のいずれか導入) | 高年齢者雇用安定法 |
2025年4月1日 | ・高年齢雇用継続給付の給付率上限を15%から10%に引き下げ | 雇用保険法 |
・障害者雇用における除外率の引き下げ | 障害者雇用促進法 | |
・育児休業給付金の延長時の確認書類の追加など審査の厳格化 | 雇用保険法施行規則 | |
・出生後休業支援給付金として、両親ともに14日以上の育児休業取得で、28日を上限に給付率13%を上乗せ支給(給付率合計80%) | 雇用保険法 | |
・育児時短就業給付金として、2歳未満の子を養育する短時間勤務者に賃金の10%を上限として給付金を支給 | 雇用保険法 | |
・所定外労働制限を小学校就学前までの子を養育する従業員に拡大 ・子の看護休暇の目的拡充(感染症に伴う学級閉鎖等、入園式・入学式・卒園式を追加) ・子の看護休暇を小学校3年生修了まで拡大 ・子の看護休暇の対象者に入社6ヶ月未満の従業員を追加(労使協定対象から除外) ・育児休業の取得状況の公表を従業員数1,000人超から300人超に拡大 | 育児・介護休業法 | |
・介護休暇の対象者に入社6ヶ月未満の従業員を追加(労使協定対象から除外) ・介護に直面した申出があった場合に介護休業・介護両立支援制度等の個別周知・意向確認 ・介護に直面する前の早い時期(40歳等)での介護休業・介護両立支援制度等の情報提供 ・介護離職防止のための雇用環境整備 | 育児・介護休業法 | |
・男性の育児休業取得率、時間外労働に関するPDCAサイクルの確立、数値目標の設定の義務付け | 次世代育成支援対策推進法 | |
2025年10月1日 | ・3歳〜小学校就学前まで子を養育する従業員を対象に、[始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇の付与、短時間勤務制度]の中から2つ以上を導入 (従業員は一つを選択して利用) ・導入した措置の個別の周知・意向確認 | 育児・介護休業法 |
・妊娠・出産時、子が3歳になる前に、仕事と育児の両立に関する個別意向聴取・配慮 | 育児・介護休業法 | |
2026年4月1日 | ・健康保険料と合わせて子ども・子育て支援金を徴収 | 健康保険法 |
2026年7月1日 | ・障害者法定雇用率を2.7%に引き上げ | 障害者雇用促進法 |
2028年10月1日 | ・雇用保険の被保険者の加入要件を週20時間以上から週10時間以上に引き下げ | 雇用保険法 |
[2]今後の動き
今後の動きとして出ているものとしては、「年収の壁」の引き上げ、社会保険の適用拡大の企業規模要件の撤廃、副業・兼業時の労働時通通算ルールの見直し、カスタマーハラスメント対策の措置の義務化、ストレスチェックの従業員規模の撤廃などが挙げられます。現状では、いずれも正式な決定は行われていませんが、特に「年収の壁」の引き上げについては、従業員の働く時間に関係することから、人材確保にも影響してきます。
特に従業員の関心が高い内容については、質問が寄せられることが予想されます。そのため、情報をキャッチアップしていくことが求められます。
■参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について」
厚生労働省「高年齢者の雇用」
厚生労働省「次世代育成支援対策推進法」
厚生労働省「障害者雇用対策」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
- 2025年4月1日から支給率が低下する高年齢雇用継続給付2024/12/24
- 健康保険 資格確認書と資格情報のお知らせの再交付手続き2024/12/17
- 長時間労働者への実施が求められる医師の面接指導2024/12/10
- 36協定の限度時間を超えて時間外労働をさせる際の注意点2024/12/03
- 次世代法における一般事業主行動計画の策定等と改正2024/11/26
- 改めて確認したい労働時間の取り扱い2024/11/19
- 12月2日から変わる社会保険の資格取得手続き2024/11/12
- 自転車の危険運転に対する罰則の創設とその対応2024/11/05
- 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン2024/10/29
- 2024年10月より支給要件が見直しとなった特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)2024/10/22
- 厚生労働省調査からみる男女別の離職理由2024/10/15
- 連続する勤務や休憩時間に関するよくある質問2024/10/08
- 協会けんぽの被扶養者資格の再確認2024/10/01
- 30.1%まで上昇した男性の育児休業取得率2024/09/24
- 最大84円の引上げとなった2024年度の地域別最低賃金2024/09/17
- 企業に求められる過労死等防止のための対策2024/09/10
- 2023年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は21,349件2024/09/03
- 無用な解雇トラブルを防止するために知っておきたい解雇予告の注意点2024/08/27
- 厚労省審議会から示された最低賃金額改定「全国一律50円」が目安2024/08/20
- 電子申請が義務となる労働安全衛生関係の手続き2024/08/13
- 引き続きトップとなった「いじめ・嫌がらせ」の相談件数2024/08/06
- 2025年4月から厳格化される育児休業給付の延長手続き2024/07/30
- 増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策2024/07/23
- 来年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金2024/07/16
- 重要となる職場の熱中症予防対策2024/07/09
- 3年連続増加となった休業4日以上の死傷者数2024/07/02
- 特別休暇を設ける際のポイントと注目を浴びる孫休暇2024/06/25
- 今国会で改正された育児・介護休業法の概要2024/06/18
- 今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント2024/06/11
- 賃上げに取り組む企業への公的支援2024/06/04
- 労災保険特別加入者の給付基礎日額の変更2024/05/28
- 在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理2024/05/21
- 注意が必要な36協定の「1ヶ月の時間数」の考え方2024/05/14
- 障害者雇用の現状と障害者を雇用する際の課題・配慮事項2024/05/07
- 企業の不妊治療への支援制度と助成金制度2024/04/30
- 今後注目が高まる仕事と介護の両立における課題2024/04/23
- 業務災害で死亡や休業が発生した場合に提出が求められる死傷病報告2024/04/16
- 今すぐ確認したい転倒災害の現状と防止対策2024/04/09
- 今年も4月より始まった「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン2024/04/02
- 労働基準監督署の「定期監督等」において違反件数が多い項目2024/03/26
- 労働者数が50人以上の事業場で求められる労働安全衛生法上の対応2024/03/19
- 3月分以降の協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率2024/03/12
- 2024年4月1日から労災保険率が変更になります2024/03/05
- 広範な変更が予定される雇用保険法の改正動向2024/02/27
- 36協定を締結する際の注意点2024/02/20
- 4月より変更となる求人を行う際の労働条件の明示ルールの注意点2024/02/13
- 給与計算をする際に押さえておきたい端数処理の実務2024/02/06
- 民間企業の障害者実雇用率 過去最高の2.33%の実績2024/01/30
- 29.7%の企業が70歳まで働ける制度を導入2024/01/23
- 2024年4月から変わる無期転換に関する明示ルール2024/01/16
- 2024年1月から新設された育休代替要員等に対する助成金2024/01/09